<消費増税>社会保障、再建入り口…「止血」の応急処置 |
◇経済対策、揺らぐ増税の原点
予算総則で消費税を充てる決まりの年金、介護、高齢者医療の「高齢者3経費」は2011年度、22.1兆円に達した。一方、消費税収は12.8兆円で9.3兆円分は赤字国債の発行で埋めている。税率5%のままではこの不足分が15年度に12.8兆円へ膨らむ。不足を補うには1%で2.7兆円の税収が見込める消費税を5%アップし、10%にする必要がある、というのが税と社会保障の一体改革の原点だ。
政府は増税分のうち一定分は借金の穴埋めでなく、社会保障の充実に充てる。さらに、20年度には不足分が約18兆円に達するとあって、早晩、税率10%では足りなくなる見通しだ。
消費税は3%アップなら本来8.1兆円の増収となる。ただ、14年度は増税初年度だけに経過措置などの影響で増収は5.1兆円にとどまる。厚生労働省は5.1兆円を借金で賄ってきた基礎年金の国庫負担割合(2分の1)を保つ経費(2.9兆円)、高齢化に伴う自然増分(1.5兆円)や、診療報酬の経費(2000億円)に充てるほか、残る5000億円分は子育て支援や低所得者への国民健康保険料軽減、難病対策など社会保障の「充実」に振り向ける考えだ。
しかし、首相が増税と同時に5兆円の経済対策を打ち出したことは疑念を呼んだ。政府はその財源を13年度の税収見込み額を上回った分などで賄う意向で、田村憲久厚労相は1日「消費税を引き上げたがために他の税収が落ち込んで税収が確保できなければ大変」と理解を示したが、「財政規律が緩むのでは」との見方も残る。
増税法の付則には「成長戦略や防災および減災に資する分野に資金を配分する」と記されている。「国土強靱(きょうじん)化」を盾に公共事業の財源確保を狙う与党内の勢力が盛り込ませた文言で、今回の5兆円の経済対策に同勢力は勢いづいている。
政府は17年度までの工程表に基づき、一体改革に着手する。ただ、税収は見通せず、個別の社会保障政策への割り振り額は未定。「公共事業派」が付け入るスキはある。
安倍首相は1日の記者会見で「消費税収は社会保障にしか使わない」と改めて明言したが、消費増税とセットで打ち出した経済対策は、増税の原点をあいまいにしかねない。
◇復興法人税、12月に結論
経済政策パッケージは、国と地方を合わせて1兆円あまりの効果を見込む政策減税と、5兆円規模の新たな経済対策からなる。焦点となっていた復興特別法人税(約9000億円)は1年前倒しの今年度末での廃止を検討するとし、12月に結論を出す。
政策減税は、国税と地方税を合わせて投資促進税制で約7300億円、所得拡大促進税制で約1600億円、住宅ローン減税などで約1100億円、合計約1兆100億円の減税効果を見込む。5兆円規模の経済対策は▽低所得者向けの現金給付(約3000億円)▽住宅購入者向けの現金給付(約3100億円)▽東京オリンピック対応の交通や物流ネットワーク整備--などだ。【田口雅士】 ・・・ 平成25年10月2日(水)、毎日新聞 7時20分配信より
私のコメント : 消費増税、社会保障については、政治家だけでなく、その専門とされている学者によるわかりやすい説明が日本国民に対して必要である。