台風26号 伊豆大島 「とにかく生きていて」 必死の救助阻む、三原山の土砂 |
「水が飲みたい…」「大丈夫だよ」。東京・大島で、多数の死者・行方不明者を出した台風26号。16日、一時行方不明になっていた女性が見つかり、深夜まで懸命の救出活動が続いた。「72時間の壁」といわれ、災害から72時間以上がたつと、生存率が急激に低くなる。夜を徹して必死の捜索と救出が続けられたが、足場の悪さや広範な現場、大量の土砂に阻まれ、難航を極めた。一時行方不明だった女性が見つかったのは伊豆大島・丸塚地区。16日朝、がれきの間から顔だけ出して助けを求めているのを住民が発見し、午前10時半ごろから警視庁の隊員らによる救助が始まった。「76歳です」。問いかけにしっかり答える女性。しかし、えびぞり状態の女性の上に何重にも流木が重なり、隙間には水を含んだ土砂がびっちりと入り込んでいる。重機を使うと土砂が崩れる恐れがあり、隊員らは手作業で掘り進めた。「孫が待っているよ」「大丈夫」。隊員らがしきりに女性に声を掛ける。「水が飲みたい」という女性に、隊員らは水を含ませたガーゼを口に含ませた。日が暮れるにつれ容赦なく吹き付ける冷たい風。午後10時40分ごろ、女性の上半身が姿を現したが、ぐったりした様子で呼びかけにも応じなくなったため、隊員は懸命に心臓マッサージを続けた。伊豆大島西部の三原山中腹に位置する神達(かんだち)地区。頂上付近の山肌が大きくえぐり取られ、大量の土砂が根こそぎ樹木をなぎ倒して通り過ぎた筋が2本確認できる。幅にして100メートルほどの箇所も。そこにあったはずの民家は跡形もなく押し流され、がれきや木々が辺り一面を覆う。数十メートル先の駐車場から流された車が折り重なり、真っ二つに折られた電柱があちこちに散らばる。「集落のほとんどの住民と連絡が取れない。あまりにひどく言葉も出ない」。神達地区で水道工事会社を経営する佐々木一典さん(50)は呆然(ぼうぜん)としていた。東京消防庁のハイパーレスキューや地元消防、被害を逃れた住民らが樹木や岩をかき分け、捜索を続ける。しかし、ぬかるんだ土砂に足を取られ、思うように作業が進まない。「ここにパスポートが落ちている」「これは、かわいがっていた猫の餌入れだよ」。辺り一面を土砂が覆う地区内で知人の手がかりを捜す40代の女性2人の姿があった。カメラ、食器、旅行雑誌…。周囲の泥や樹木の間からは、昨日まで知人が生活をしていた痕跡が確認できるが、知人の姿は一向に見えない。女性は「神達地区は沿岸より高く、津波の際に逃げるルートだった。『安心だね』と話していたのに、逆に山側からのまれてしまった」と言葉を詰まらせた。崩れ落ちた山肌は沢を伝うなどして土石流となり、河口の元町地区に流れついた。周辺には樹木やがれきがあふれ、道をふさぐ。間近の港や海水は土砂で茶色に染まっていた。元町地区周辺でも民家数軒が押し流された場所を中心に救出作業が続いた。岩田桂子さん(72)は保育士をしていた当時の上司の安否を確認しに救出現場に駆けつけた。上司は定年を迎えた後で町議などを務め、教え子や知人らの相談相手になっていた。「あとは余生を自由に楽しむだけだ」と話していたという。岩田さんは「とにかく無事で見つかってほしい」と救出作業を見守った。日没前、近くのがれきの中から、1人の子供が発見された。幼い女児とみられる。すでに息はなく、地元消防隊員は遺体を毛布にくるみ優しく抱える。警視庁の車で遺体が運ばれる前、隊員らは手を合わせ、1人が頭をそっとなでた。(森本充) ・・・ 平成25年10月17日(木)、産経新聞 7時55分配信より
私のコメント : 日本赤十字社 本社と日本赤十字社 東京都支部からの台風26号による伊豆大島 被災住民への対応も、各関係者、関係機関も、その対応状況については、今回、注意深く見守っている。