<日欧EPA>安倍首相が意欲 |
メルケル首相は4月30日、首脳会談後の記者会見の冒頭、「私たちのような輸出大国にも資するEPAが2015年にも締結できればいい」と発言。安倍首相も「日独で中小企業のマッチングを推進していく」と協力関係を深める考えを示した。
EPAをめぐる日本とEUの協議は、4月4日まで東京で開かれた第5回交渉会合で、品目ごとの関税撤廃や税率引き下げなどの提案を相互に交換。EU加盟各国は現在、日本側の提案内容を持ち帰って検証する作業を進めている。
EUは13年4月の交渉開始時に、日本とのEPAに慎重な国に配慮し、1年後に日本側の提案を検証し、内容が不十分なら交渉を打ち切ることを決めた。ドイツは日本車の流入に警戒感を示すフォルクスワーゲンやBMWなど有力な自動車メーカーが多いだけに、メルケル首相の発言が注目されていた。今回の首脳会談で来年中に妥結させる目標が共有できたことで、日本政府には「後ろ向きだった一部の加盟国の姿勢も変わり始めた」(外務省筋)と安堵(あんど)感が広がっている。
日欧EPAに懸ける日本の最大の狙いは、自動車や電化製品の欧州市場での関税撤廃だ。現在の欧州の輸入関税は、自動車が10%、テレビが14%など。日本のライバル、韓国はEUとの自由貿易協定(FTA)を11年に暫定発効させ、すでに自動車などの関税撤廃が決まっている。日本の経済界には「韓国メーカーとの競争で劣勢に立つ」という焦燥感が強くある。
一方、EU側が声高に主張しているのが日本の「非関税障壁」分野だ。自動車の安全基準、医療機器、医薬品分野の制度改革などを求めている。自動車分野では、日欧で新興国に先駆けた新ルール作りを主導する方針だが、EU側は、日本の鉄道などの交通インフラや公共事業などの政府調達市場が閉鎖的だと主張しており、欧州メーカーが参入しやすい仕組みを求めている。
最後まで難航しそうなのが、日本が輸入する農産品や飲料品の関税だ。ワインやチーズ、パスタ、チョコレートなど付加価値の高い加工品について、EU側は日本への輸出増加を狙って関税の撤廃を要求。ワインについては、関税の撤廃時期を巡って対立している。パスタ、チーズ、チョコレートなどの加工食品は、日本がTPPで「聖域」と位置づける麦や乳製品、サトウキビなどの農産品が原料だけに、難しい調整が必要になる。
EU側の検証作業は6月にも結論が出る見込み。首相は1日のロンドン・シティーでの講演でもビジネスマンらを前に日欧EPAの重要性を力説する見通し。対日EPAに対する欧州経済界の後押しを期待している。
◇経済連携協定(EPA)◇
特定の国や地域との経済関係の強化を目指し、貿易や投資の自由化、人の移動の促進などを行う包括的協定。自由貿易協定(FTA)が主に関税の削減や撤廃、サービス業の規制緩和にとどまるのに対し、EPAは交渉対象分野が幅広い。投資のルール整備や知的財産の保護を盛り込むことで、企業のグローバル展開を支援し、貿易・投資を促進する狙いがある。日本は現在、シンガポールやメキシコなど13の国・地域との間でEPAが発効し、欧州連合(EU)や中国・韓国など10の国・地域との間で交渉を進めている。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も、関税だけでなく知的財産権や国有企業改革なども対象にするため、EPAに分類される。 ・・・ 平成26年5月1日(木)、毎日新聞 21時17分配信より
私のコメント : EU側が声高に主張しているのが日本の「非関税障壁」分野である。自動車の安全基準、医療機器、医薬品分野の制度改革などを求めている。ワインやチーズ、パスタ、チョコレートなど付加価値の高い加工品について、EU側は日本への輸出増加を狙って関税の撤廃を要求しているが、いかにして、農業分野におけるお互いの価値観を共有できるかが、「非関税障壁」分野、経済連携協定(EPA) 問題解決へ向けての鍵ともなる。