欧州委員長・ユンケル氏に反対 英、譲歩せず孤立鮮明 |
【ベルリン=宮下日出男】欧州連合(EU)の次期欧州委員長の人選を通じて、英国の孤立が鮮明となった。27日の首脳会議では前例のない採決が行われ、大半の加盟国がユンケル前ルクセンブルク首相(59)を支持したが、英国は反対を貫いた。今後、EUの新指導部と他の加盟国は英国の一段の「EU離れ」を食い止める必要に迫られるが、その成否は予断を許さない。英紙タイムズ(電子版)は「英国のEU離脱が近づいた」と報じた。
欧州委員長は、EUの執行機関である欧州委員会のトップ。ユンケル氏の就任は7月中旬の欧州議会で承認された後、正式決定する。バローゾ現委員長(ポルトガル元首相)の任期は10月末までで、ユンケル氏の任期は11月から5年。
キャメロン英首相は、ブリュッセルで開かれたこの日の首脳会議後、「結果は受け入れねばならない。英国は(次期)委員長と協力する」と厳しい表情で語る一方、「きょうは欧州にとって悪い日だ」と強調した。
今回の欧州委員長の人選をめぐっては、欧州議会の最大会派が推す候補で、欧州統合推進派のユンケル氏を多くの加盟国が支持。国内に有力な反EU政党を抱える英国は反対してきた。
首脳会議では英国が多数決を要求。全会一致で委員長が指名されてきた原則を破る形で、初めて採決に持ち込まれた。結果、加盟28カ国中、反対したのは英国とハンガリーのみ。来年に総選挙が控える中、キャメロン氏としては、「ユンケル氏反対」が根強い世論を前に、最後まで譲歩姿勢は見せられなかったようだ。
ユンケル氏は、ユーロ圏財務相会合の常任議長として欧州債務危機の対応を担い、「経験豊富で、EUの問題もわかっている」(サマラス・ギリシャ首相)と多くの首脳は期待する。
だが、EUの権限縮小を求める英国にとって、「ユンケル委員長」では逆にEUの権限強化につながりかねない。2017年末までにEU残留か否かの国民投票を実施するキャメロン政権としては、EU残留のための世論対策上も受け入れられなかったといえる。
他の首脳に“勝利感”はない。メルケル独首相は「英国の懸念を真剣に受け止める」とし、首脳会議の総括文書には英国の求めに応じ、委員長の人選手続きを見直す方針を明記。今秋に任期満了となるEU大統領など、他の新体制の人事でも配慮するとみられる。
ただ、今回の惨敗で英国のEU懐疑派が勢いづくとの見方は強い。EU改革で成果が出なければ、総選挙や国民投票に大きな影響を与えるのは必至だ。
・・・ 平成26年6月29日(日)、産経新聞 7時55分配信 配信
私のコメント: 日本にとっても、メルケル独首相が、「英国の懸念を真剣に受け止める」とし、首脳会議の総括文書には英国の求めに応じ、委員長の人選手続きを見直す方針を明記の内容、微妙な経済展開になりつつあると感じる。