川勝・静岡知事インタビュー 「文・武・芸」発展目指す |
近年の学力低下問題に続いて、平成27年末の全国体力テストでは小学5年男子のボール投げが2年連続全国最下位と判明。「文・武・芸」の鼎立(ていりつ)を目指す川勝平太知事はどんな対策をとるのか。さらには東日本大震災から5年を迎えるにあたり、地震津波対策や原発問題などあぶり出された成果と課題は何なのか。新春にあたり、川勝知事が大いに語った。(聞き手 深山茂、田中万紀)
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--任期も折り返しを過ぎた28年、特に力を入れて取り組みたいことは
川勝平太知事 スポーツです。27年、小学生のボール投げが最下位だった(注〔1〕)。知性、感情、意欲はスポーツしないと身につかない。学力と同様に、体力が低いのは、学校の授業での体の使わせ方や教え方、親の遊ばせ方の問題だから、スポーツの底上げをしたい。
--学力テストで全国最下位だったときには全方位的な対策をとった。体力テストの最下位ではどんな対策をとるのか
地域のスポーツクラブの活動がもっと広まった方がいい。そこで人材バンクをつくり、地域のスポーツクラブを県全体として組織化しようとしている。まずは磐田市を中心にしている。そういったものを通じて、健康を増進し、スポーツの大切さを教えたい。一流を目指す人、楽しむ人、支える人を含めて、県内では「文・武・芸」の三道がバランスよく発展するようにし、トップクラスは世界のひのき舞台で活躍できるような人にする。
◆高校生に海外体験
世界に羽ばたくには、高校生全員に一度は海外体験をさせたい。親日的で安全で、時差が少ないところ、例えば台湾が筆頭候補になる。静岡空港から直行便もあるので、高校生のためにもなるし、静岡空港の活性化にもつながる。
--静岡空港にはここ1年で中国路線が増えた。今後どんな方向に発展するのか
成田や羽田とは結ばれず、地域間を結ぶリージョナル空港としてスタートした。その後、福岡線が増便し、札幌便と沖縄便の機材が大型化するなど、国内線は堅調であり、国際線も国内100近くの空港の中で中国人利用客が8位、地方空港ではトップだ(注〔2〕)。
首都圏外で首都圏に近い空港であり、中部国際空港に一番近い空港でもあり、首都圏の空港と中部地方の空港の双方の補完性を持つ。さらに、大規模災害における広域防災拠点にも指定された。こうなると、空港の位置づけはオープン時とは全く変わった。国際的なイベント時の補完的空港となり、有事の際には受援の拠点となる。
そういう観点から、静岡空港周辺に新幹線新駅を作った方がいい。JR東海はリニア中央新幹線の完成以前に新駅はつくれないとしているが、どうせ必要ならば先につくって、いざというときに乗降できるようにしておくと、国際的にも日本の信用力を上げることになる。
3月にはオフサイトセンターができ、その後空港ビルが増設され、ホテルの建設もあり得る。航空博物館をつくりたいという話もある。日本のど真ん中で地の利もある静岡空港は、大化けします。
--東日本大震災から5年を迎える。本県の防災や県民の意識は5年間でどう変わったのか
津波というものがいかに恐ろしいかを学んだ。それまでは地震対策が中心で、南海トラフ巨大地震の津波への備えはなかったに等しいので、すぐに対策をつくった。25年度から10年間で被害を8割減らす計画を立て、それに必要な金額は4200億円と試算した(注〔3〕)。
東日本大震災後、津波対策に対する関心が非常に高まり、津波に対する防災訓練への参加がはるかに増えた。「自助・共助・公助」のうち、まずは自らを助けるという意識が相当に芽生えた。静岡県は災害の博物館のようなところがあって、どんな災害でも起きる可能性がある。しかし何に対しても心の用意をしているのがすごいところだ。
◆防災の自覚広まり
例えば噴火が懸念される富士山の麓の裾野市では、高校3年生全員がジュニア防災士の資格を持っており、彼らが家に帰って家族に教えると、家庭としての防災力が高まる。大きな事故につながらないよう小さなことを積み重ねる重要性も、この5年間で自覚的に広まったことだ。
--東日本大震災を機に全面停止している浜岡原発の再稼働についてどう考えるか
震災前の原発依存度は九州電力が約50%、四国電力も50%以上。一方で中部電力は約15%であり、(浜岡原発を)川内原発や伊方原発と同列に論じるべきでない(注〔4〕)。最終的な原発稼働の責任を持っているのは電力会社だと思っている。
全ての原発はいずれ廃炉になる。そのときにどうしたら効率的にできるのか、その廃炉の技術は全世界に売れるのか。安全対策に数千億円を投じるよりも、そこを考えた方がいい。浜岡原発が安全技術の中心地になるようにしてほしい。
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(注)〔1〕ボール投げは全国平均が小中学生の男女いずれも過去最低を更新しており、全国的に下落傾向にある。中でも県内の小学5年男子は平均が平成25年度の22.0メートルから、26年度21.75メートル、27年度21.43メートルと低下が著しい。
〔2〕静岡空港は27年の年初に1路線だった中国路線が、1月下旬から9月末までの8カ月に13路線増えて計14路線となった。1月に約2万1000人だった国際線の搭乗者が、8月には5万人を超え、中国線の搭乗者も、1月に比べて8月は10倍近くに膨れ上がった。
〔3〕県が25年にまとめた「地震・津波対策アクションプログラム」。10年計画で計約4200億円を投じ、高さが不足する施設のかさ上げや防潮堤整備など約160項目の対策を実行して、津波による死者を8割減らすことを目指している。
〔4〕新規制基準による安全審査に適合した原発のうち、稼働中は九州電力川内原発の1、2号機のみ。27年12月に再稼働差し止めの仮処分が取り消された関西電力高浜原発3号機は、今月中にも再稼働予定。四国電力伊方原発3号機もすでに地元の同意を得ており、28年中の再稼働が見込まれている。 ・・・ 平成28年1月3日(日)、産経新聞 7時55分配信より
私のコメント: 川勝・静岡知事インタビュー 内容は、各都道府県知事におかれては、参考ともなる内容であると思われます。 静岡県下、その政治風土の高さも、川勝・静岡知事より、示されていると感じる。
「 The Japanese-German Conference in Tokyo, Sept. 25-27, 1979 」
Problems in Food and Reformation of Agricultural Structure In Japan
-- -- Centering around Rice Surplus -- -- by Agricultural Policy Center