慶応義塾、新塾長に長谷山氏 「教育や研究を強化」 |
両氏はこの日、慶大・三田キャンパスで会見。長谷山氏は「世界から高く評価される大学になるよう尽力する」と語ったが、実はここに至るには、とても「民主的」とは言えない不可解なプロセスが潜んでいた。
塾長選挙は、まず3月下旬から、同大9学部と、幼稚舎から高等部までの「一貫教育校部門」、「職員」の計11部門から各2人ずつ候補を選出。候補は他部門からも選べる。さらに、各部門から「選挙人」を四十数人ずつ出す。今回は、計450人の選挙人が今月16日の塾長選挙で投票し、候補者を3人に絞り込んだ。最終的に、学部長と学外の財界人などが名を連ねる「評議員」ら計29人の「選考委」が1人を推薦、最高意思決定機関の「評議員会」で新塾長が決まる――という流れだ。
■得票数は「一つの参考資料」
選考委は半世紀以上にわたって、塾長選で最も多く票を獲得した候補者を推薦してきたが、今回は違った。213票を獲得した長谷山氏は2位にとどまり、1位は230票取った元経済学部長の細田衛士教授(63)だったのだ。
その点を会見で報道陣に突っ込まれると、清家塾長は「得票数は、選考委が選ぶ際の一つの『参考資料』。選考委メンバーは、候補者3人にしっかりと質疑を行い、議論した結果、長谷山氏を選んだ」と説明した。新塾長の長谷山氏は「私は一候補者であって、選挙の過程に関与していないので、お話しする立場にない」とかわした。
どう考えても、最多得票者をトップに選ぶのが民主的な手続き。なぜか降ろされてしまった細田氏を三田キャンパスの研究室棟1階で日刊ゲンダイの記者が直撃すると、困惑気味にこう話した。
「これまでの選挙では、最多得票者以外が塾長に選ばれたケースは一度もなかったはずです。なぜこういう結果になったのか私も分かりません。選挙を取り仕切る評議員会からの説明もないんですよ」
■決め手は財界との距離?
細田氏は、比較的リベラルな考えの持ち主で、安倍政権とは明らかにスタンスは異なる。不可解な選出過程のウラには何があるのか。
「細田さんは財界とは距離を置き、問題があれば相手が大企業でも物言うタイプ。一方、長谷山さんは、清家さんが塾長に就いてから、教育部門などを取りまとめる常任理事に選ばれ、ブレーンとして働いてきました。清家さんともども、財界との距離も近く、調整にもたけています。財界としても、清家―長谷山ラインの方がくみしやすいと考えたのでしょう。総額300億円規模の信濃町キャンパスの新病院棟建設など、慶大が進める事業が頓挫しては困りますからね」(慶大関係者)
会見で長谷山氏は「高度な先進医療を支えるため、新病院棟の建設を進める必要がある」と強調した。昨年の集団レイプ事件に続き、最近も飲酒による死亡事故が発覚。不祥事連発のうえ、怪しい塾長選びとは、「若き血」はもうドロドロだ。