「日本遺産」に注目 |
2017年2月10日 (金)
◆地域の歴史的魅力や特色を通じてわが国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産」として認定する文化庁の取り組みが2015年度からスタートし、これまで37件が認定されている。今年度の募集で「くすり」関連として奈良、そして富山と佐賀が連携し認定申請を行った
◆奈良は県内16市町村と連携し「薬草木の花咲く都奈良~薬草木からの贈り物」をタイトルに、古代から現代まで薬草木や薬に関する物語が、時を超えて脈々と息づく姿をストーリーとして展開
◆富山の4市町と佐賀の2市町は「江戸時代から続く『置き薬』のまち:越中富山と備前田代」。富山の置き薬の歴史と共に、その販売手法を学び、貼り薬の製造や配置薬業が盛んな地域として発展した佐賀の田代地区をストーリーの中に入れている
◆日本遺産の認定の可否は4月下旬に公表される。昨今、日本の伝統薬は、インバウンドから注目されているだけに、その歴史的な経緯まで含めて、日本遺産としてアピールできる価値は大きい。認定審査の動向に注目したい。・・・2017年2月10日 (金) 薬事日報 配信より
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なら歳時記 宇陀松山「薬の館」 「漢方ルーツ」繁栄語る /奈良
毎日新聞2016年6月15日 地方版
富山と並び配置薬業が盛んな奈良で、地場産業の漢方薬製造を活性化させる県の取り組みが始まっている。そのルーツを知ろうと、かつて薬問屋街として栄え、重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選定されている宇陀市の宇陀松山地区にある同市歴史文化館「薬の館」を訪ねた。
奈良は製薬会社の創業者を多く輩出している。薬種業・近江屋(現武田薬品工業)を創業した近江屋長兵衛が河合町出身であるほか、信天堂山田安民薬房(現ロート製薬)の山田安民▽中将湯本舗津村順天堂(現ツムラ)の津村重舎▽命の母本舗笹岡省三薬房(現笹岡薬品)の笹岡省三の3人が宇陀市出身だ。
これは江戸時代、大和が薬業で栄えていたことと関連する。薬の館はその繁栄をしのぶ資料館で、宇陀松山で薬問屋を営んでいた旧細川家の江戸末期の建物を活用した施設だ。細川家は藤沢商店(現アステラス製薬)を大阪で創業した藤沢友吉の母方の里。友吉自身は三重県名張市出身だが、薬業の道に進んだことに細川家の影響もあるとみられる。
「薬の館」に展示されている薬の看板=奈良県宇陀市大宇陀上で、皆木成実撮影
「江戸時代、宇陀松山には53軒も薬問屋がありました」。薬の館の案内をする吉川友造さん(80)は話す。江戸初期に宇陀松山藩が廃藩になってから、宇陀松山は薬商人の街として栄えた。その心意気を伝える遺物が薬の館の屋根上にある銅製看板だ。主力商品である腹薬「天寿丸」などを宣伝する高さ2・7メートルの看板には唐破風(からはふ)付きの屋根もあり、立派な造りだ。
ただ豪華な看板に反して、住宅自体はそれほど豪華ではないらしい。吉川さんは「粗壁をそのままにする箇所もあるなど簡素な一面もあります。倹約しながらも外には見えを張る、関西の商人気質だと思います」と話す。
館内には他の薬小売り店で使われていた約70点の薬看板のコレクションが展示されている。「浅田飴」「太田胃散」「ノーシン」など今でもおなじみの薬の名も見かける。昔の漢方薬小売り店の店先を再現したコーナーもあり、調合する漢方薬を入れる百味箪笥(ひゃくみだんす)などが興味深い。
宇陀市の薬の歴史は古く、日本書紀には飛鳥時代、薬用に鹿を狩る「薬猟(くすりがり)」が「菟田野(うだのの)」(同市榛原足立)で行われたと記されている。奈良を「漢方のメッカ」と売り出して漢方薬産業を活性化し、観光に結びつけるプロジェクトを進める県にとって歴史は強みだ。
今年4月、その成果が目に見える形になった。吉野の伝統薬の原料が採れるキハダの実を使った「味覚糖・陀羅尼助飴(だらにすけあめ)」がコンビニなどで発売された。県の仲介でUHA味覚糖(大阪市)と共同開発に取り組んだ藤井利三郎薬房(吉野町)の藤井博文社長(46)は「若い人に伝統薬に興味を持ってもらうきっかけになった」と喜ぶ。
薬を客に預け、使った分だけ後で利益を得る配置薬の商法を「先用後利(せんようこうり)」と呼ぶ。奈良の薬の歴史を発掘する取り組みは、すぐに結果が出なくても、やがて古里を元気にさせる先用後利だと思った。【皆木成実】
◆メモ
宇陀市歴史文化館「薬の館」
宇陀市大宇陀上2003。午前10時〜午後4時。月・火曜休館。入館料は大人300円。中学生以下150円。問い合わせは同文化館(0745・83・3988)。 ・・・2016年6月15日 毎日新聞 地方版 配信より
私のコメント : 奈良は製薬会社の創業者を多く輩出している。薬種業・近江屋(現武田薬品工業)を創業した近江屋長兵衛が河合町出身であるほか、信天堂山田安民薬房(現ロート製薬)の山田安民▽中将湯本舗津村順天堂(現ツムラ)の津村重舎▽命の母本舗笹岡省三薬房(現笹岡薬品)の笹岡省三の3人が宇陀市出身だ。
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再挑戦 県「奈良-薬草木からの贈り物」申請 ライバルは「配置薬」の富山・佐賀 /奈良
毎日新聞2017年3月7日 地方版
県は文化庁の2017年度「日本遺産」に、県内16市町村と連携し、奈良の薬文化をアピールする「薬草木の花咲く都 奈良--薬草木からの贈り物」の認定申請を行った。16年度にも薬文化で申請したが落選しており、内容を練り直しての再挑戦となる。今回は配置薬で全国的に知られる富山県が佐賀県と合同で薬をテーマに申請しており、余談を許さない。【皆木成実】
日本遺産は地域の歴史文化・伝統を語るストーリーを認定し、観光などに役立てる目的で15年度開始。県内では明日香村などの「日本国創成のとき」、吉野町などの「森に育まれ、森を育んだ人々の暮らしとこころ」の2件が認定されている。 仏教の関係から奈良は日本の薬文化の発祥の地とされる。江戸時代以降は「大和売薬」として全国的に知られ、現在の配置薬生産でも富山県に次ぐ。薬の歴史を解説する前回の申請ストーリーが「専門的過ぎた」という批判を受け、今回は親しみやすい内容に改良。薬にもなる県内の花々を「薬草木」という観点でストーリーに組み入れ、薬師寺のハス、長谷寺のボタン、月ケ瀬梅林なども構成文化財にした。 参加も前回の11自治体(奈良、大和郡山、橿原、桜井、五條、御所、葛城、宇陀市、斑鳩、高取町、明日香村)に大和高田市、河合、吉野、下市町、天川村を加え、県内市町村の4割にあたる計16自治体に拡大した。これにより、天川村産の民間薬「陀羅尼助(だらにすけ)」なども構成文化財になった。 担当の県薬務課は「観光振興だけでなく、『薬の奈良』が全国に知られれば、県内の薬産業の追い風になる。古代から続く薬の歴史をPRしてぜひ認定を受けたい」と意気込んでいる。 県内では17年度、薬文化、王寺町などの「太子道」など県内から計3件が日本遺産に申請。この他、大和高田市など県内5自治体が参加する「竹内街道・横大路(大道)」活性化実行委が大阪府を通じて申請している。結果は4月に公表される。 ・・・ 2017年3月7日、毎日新聞 地方版 配信より
私のコメント : 奈良県は文化庁の2017年度「日本遺産」に、県内16市町村と連携し、奈良の薬文化をアピールする「薬草木の花咲く都 奈良--薬草木からの贈り物」の認定申請を行った。2016年度にも 薬文化で申請したが 落選しており、内容を練り直しての再挑戦となる。今回は配置薬で全国的に知られる富山県が佐賀県と合同で薬をテーマに申請しており、余談を許さない。仏教の関係から奈良は日本の薬文化の発祥の地とされる。江戸時代以降は「大和売薬」として全国的に知られ、現在の配置薬生産でも富山県に次ぐ。