(1) 業務上で取り組む実践例 ① 実践例①個別支援における成功体験の蓄積 桑名市には地域包括支援センターが直営型1ヶ所、委託型4ヶ所の合計5ヶ所があり、それぞれに保健師(あるいは経験のある看護師)・主任介護支援専門員・社会福祉士が配置されている。 ただし、委託型には虐待対応や成年後見制度に関しては活動内容に制限がある。例えば、虐待対応では虐待を受けている高齢者を施設に措置入所したり、高齢者の自宅に立入調査したりする権限は与えられていない。また、成年後見制度でも市区町村長申立て、戸籍等の公用交付などはできないため、これらは直営型が請け負うことになる。このように直営型は委託型と緊密に連携してサポートする形をとっており、支援困難事例が生じた際にも直営型の職員が助言等にあたる。
(中略)
② 実践例⑦各種研修会での講師依頼 桑員地域の社会福祉士有志で構成され、桑名市の行政社会福祉士が副会長を務める桑員社会福祉士会では、休日や時間外を利用して勉強会を実施している。その中で地元弁護士を講師に招いて債務整理方法や法テラスの利用方法などについて講義を担当してもらっている。 また、三重県健康福祉部長寿介護課主催の虐待対応に関する研修会や交流会では年5回程度、弁護士に講師を依頼している。桑名市の行政社会福祉士が研修の企画立案に参加しており、平成25年6月28日には桑名市の行政社会福祉士が桑名市内の弁護士とともに模擬事例を用いた講義を行った。 社会福祉士を対象とした研修会は県単位の広域開催が多いが、このような機会を利用して地元弁護士と社会福祉士の交流・協働機会を設けている。
3. 行政社会福祉士の今後
(1) 課題と結論 ① まとめ これまで、高齢者福祉分野では医療と福祉の連携が強く叫ばれてきたが、支援困難事例においては法律専門職との連携が不可欠である。しかしながら、桑名市では法福連携は不十分な状態にあったため、法律トラブルを抱えた事例に対し、福祉専門職は繰り返し時間と労力を割いてきた。桑名市では行政社会福祉士が地方自治体に属する立場から、法福連携が十分でないという地域課題を見出し、その解消に向けていくつかの実践を試みてきた。法福連携を実現すれば地域の福祉の進展につながると考えられる。行政社会福祉士という立場を活かして業務の内外を問わず、法福連携の実現のための機会を積極的に設け、今後も引き続いて地域福祉の推進に努めていきたいと考えている。 以上が行政社会福祉士として取り組んだ法福連携推進の実践報告であるが、行政社会福祉士の果たすべき役割はまだ明確に定まっていない。そのうえ、課題も多いことが明らかになっている。行政社会福祉士はいまだに少数であり、その配置も地域差が大きく、組織化もされていない。多くの行政社会福祉士は日々の業務上で取り組むべき個別案件が多く、広域的視点をもって大きな地域課題に取り組む機会は少なく、使用する地方自治体側でもそのような役割まで求めていないのが現状である。私たち行政社会福祉士は地方自治体に所属することと専門性を相乗的に活かし、地域にその存在価値を示していかねばならない。地方自治体や地域のニーズから求められた役割を果たすだけの現状に甘んじてはいけないのである。そのためには自ら積極的に動き出し、地域と地方自治体における行政社会福祉士の果たすべき役割を見つめ直し、行政社会福祉士自身が協力して活動していかなければならないと考える。私たちの行動は小さいものであるが、徐々に実績を重ねて信頼を得、存在価値を示すことで、最終的には地域に還元すべき利益の最大化を図らねばならない。この目標に向け、われわれ行政社会福祉士は不断の努力と創意工夫を求められているのである。行政社会福祉士の活躍はこれからが本番である。