<日銀追加緩和>米欧に追い込まれた形 市場は好感 |
金融市場は10兆円の追加緩和を「予想外のサプライズ」(UBS証券の伊藤篤ストラテジスト)と受け止めた。東京外国為替市場では円を売ってドルを買う動きが広がり、午後5時現在は前日比32銭円安・ドル高の1ドル=79円04~06銭まで円安が進行。政府内では「よっしゃー、(78円台を)抜けた!」と喜ぶ幹部の姿が見られた。
市場では当初、日銀が向こう2年程度の経済見通し「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を10月にまとめるタイミングで、追加緩和に踏み切るとの見方が多かった。しかし、海外経済の回復が想定より遅れ、国内の景気を下押ししかねない状況に直面。とりわけ中国は「期待していた年内の回復が裏切られた」(日銀幹部)。日銀の白川方明総裁は決定会合後の記者会見で「この1カ月のデータが海外経済の減速を裏付けていた」と説明。経済官庁幹部は「(8日発表の)米国の雇用統計が悪かった段階で(追加緩和が)視野に入った」と見る。
こうした中、政府は9月の月例経済報告で、景気認識を2カ月連続で下方修正。安住淳財務相は19日朝の閣議後の記者会見で「QE3(量的緩和第3弾)、ECBの動きの中で日本が何をすべきか」と述べるなど、日銀への風圧を強めていた。FRBが追加の量的緩和(QE3)に踏み切るなど、米欧が緩和姿勢を強める中、日銀が追随しなければ、円高圧力が強まる懸念も強まっていた。
日銀内では当初、「金融環境は既に緩和状態。海外経済の減速がどの程度、内需に波及しているかを、(10月上旬公表の)日銀短観で確認すべきだ」として、今回の追加緩和への慎重論も根強かったが、景気の下振れ懸念と米欧の緩和姿勢の強まりに押し切られた形。日銀の白川総裁は記者会見で、35兆円で始まった「資産買い入れ基金」の規模を80兆円まで拡大させてきたことに触れ、「(米欧に比べて)日銀の政策が大胆さに欠けるとは思えない」と語気を強めた。
◇景気刺激効果は限定的
日銀のサプライズ緩和で株高、円安が進むなど市場は好感したが、日本経済は楽観できない状況だ。日銀は景気の先行きについて「今年度前半にも緩やかに回復する」とのシナリオを描いていたが、会合後の発表文で「当面、景気は横ばい圏内の動きにとどまるとみられる」とした上で、回復時期についても「半年程度後ずれする」(白川総裁)とシナリオの修正に転じた。
海外経済の減速が長引いているのは、欧州債務危機の影響が、ユーロ経済をけん引してきたドイツや、中国などの新興国にも波及しているためだ。ドイツの今後半年の景況感を示す景気期待指数は、9月にマイナス18.2と低迷。中国の1~8月の欧州連合(EU)向け輸出も前年比4.9%減となり、国内の生産や消費の落ち込みにつながっている。中国経済の減速で日本の輸出も減少。これに尖閣問題による反日デモなどのリスクも浮上し、生産や観光客の減少が、内需を下押しする可能性すら出てきた。
ただ、金融緩和は万能薬ではない。日銀は、基金増額で金利が下がり、企業が設備投資などに使うお金を借りやすくすることで、景気刺激を狙う。
とはいえ、2年物国債の金利は既に0.1%前後と極めて低い水準。景気の先行き不安が強まる中、企業はお金を借りてまで投資しようとはなかなか思わない。「実体経済への確たる効果が直接及ぶものではないだけに、緩和効果は長続きしない」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との見方も根強い。 ・・・ 平成24年9月19日(水)、毎日新聞 21時30分配信より
私のコメント : 世界経済を追い詰めている責任、国際上における責任、日本が負わされないよう、日本の金融有識者や学者、政治家は、内外に、今の日本の状況についても、わかりやすく、世界の各関係者にも理解してもらえるように、それぞれの立場から、その情報発信していかなければいけない時期であると感じている。