追跡2013:島根原発1、2号機運転差し止め求め 訴訟14年、新局面 福島事故、新たな知見に /島根 |
中国電力島根原発(松江市鹿島町片句)を巡り、広島高裁松江支部で1、2号機の運転差し止め訴訟が係争中だ。4月下旬には、ほぼ完成している3号機に対しても新たな提訴が予定されている。未曽有の被害をもたらした東京電力福島第1原発事故を経て、99年から続く訴訟は新しい局面を迎える。【目野創】
◆新たな訴訟
3号機は東日本大震災以降も建設工事を進めてきた。11年4月時点の工事進捗(しんちょく)率は93・6%。中国電は現時点の進捗率を公表していないが、核燃料を装荷すれば運転が可能な状態まで出来上がっている。改良沸騰水型で出力は137・3万キロワット。05年12月に着工し、当初は11年12月に営業運転を開始する予定だった。しかし不具合の発見や東日本大震災を受け、11年5月には運転開始時期が「未定」に変更された。
新たな訴訟は、中国電に運転差し止めを求める民事訴訟と、国の原子炉設置許可の無効確認を求める行政訴訟の2本立て。原発に反対する市民団体「さよなら島根原発ネットワーク」(松江市)などが中心となり、提訴と同時に「訴訟の会」の結成を予定している。弁護団は県内外の弁護士10人ほどが担当する。同会事務局の阪本清さん(60)は「もし3号機が動き出したら、廃炉までの運転期間が厳格に定められても長期間運転を続けることになる。なんとしても計画を止めたい」と話す。
◆1、2号機訴訟
1、2号機の運転差し止め訴訟は、99年4月に松江市民らが松江地裁に起こした。きっかけは、3号機増設前の調査で98年、原発から南に約2・5キロ地点で東西に横断する活断層(宍道(しんじ)断層)が確認されたことだ。原告側は、周辺に活断層が存在しないことを前提にした1、2号機の設置許可の前提が崩れた、として原発の耐震安全性を争点に掲げた。断層は長ければ長いほど大きな地震を引き起こす。中国電は当初、宍道断層の長さを8キロとしていたが、追加調査で10キロ、更に国の耐震指針改定に伴う再評価で22キロと修正。しかし22キロだった場合でも、耐震安全性は十分に確保されると主張した。一方、原告側は学者の調査などから「少なくとも30キロの可能性がある」と反論した。10年5月の地裁判決では、1、2号機建設後に宍道断層が発見されたことについて「国の安全審査は結果として不十分」と指摘。しかし「安全性に欠け、住民に具体的危険があるとは認められない」として原告側の訴えを退けた。活断層の長さも中国電の主張どおり22キロと認めた。これに対し原告側は「最新の科学的知見の意味を取り違え、十分な検証を行っていない」と控訴した。
◆福島の事故
その後に起きた東京電力福島第1原発事故は、訴訟に大きな影響を与えている。原告側は控訴審で、島根原発でも福島と同様の事故が起こる可能性があると訴える。主な主張は、▽島根原発1号機は、事故を起こした福島第1原発と同じ「マーク1」型で構造的に欠陥がある▽福島では津波前の地震で原発が損傷し、事故につながった可能性がある--などだ。そうした点を踏まえ、「国の耐震設計審査指針などが、原発の耐震安全性を保証するものではないことが明確になった」と主張する。弁護団の水野彰子弁護士(県弁護士会)は「原発事故で分かった新しい知見を基に、島根原発の危険性を主張していく」と話している。 4月3日朝刊 ・・・平成25年4月3日(水)、毎日新聞 16時38分配信より
私のコメント : 島根原発の1号機、事故を起こした福島第1原発と同じ「マーク1」型で構造的に欠陥があるとする主張について、裁判所は、今後も、十分な検証を行っていく必要がある。島根原発1号機は、日本において、当初、今後、改良することも前提にして、実験炉として、日本の原子力発電所として、初期に開発された原子炉である。有事における事故発生時の対応についても、今後、その説得力のある、わかりやすい判決文、世界の関係する各機関からも要求される。