<経団連>経労委報告…収益改善に残る不安垣間見え |
「法人実効税率の引き下げという山や岩盤規制という沼地も越えていかなければならない」。経労委報告をとりまとめた経団連の宮原耕治副会長は同日の記者会見で、政府に注文を付けた。足元では多くの企業がアベノミクスの追い風を受けているものの、この勢いを持続させるためには、政府による規制改革などの取り組みが不可欠との認識を示したものだ。今の収益改善が中長期にわたって続いていくという自信を持つには至っていない経営者の気持ちを代弁しているともいえる。
今回の経労委報告の副題は「デフレからの脱却と持続的な成長に向けて」。政府の肝いりで昨年秋スタートした政労使会議の合意文書と足並みをそろえた表現だ。
経済界は当初「労使間で決めるべき賃金に政治の介入を招きかねない」と同会議の開催に否定的だった。しかし、回が進むごとに「賃上げを経済の好循環につなげたい」とする政府への協調姿勢が強まり、今回の経労委報告でも「デフレ脱却を実現する最後のチャンス」と表現した。
個別企業の経営者も、賃上げに前向きな発言が目立つ。トヨタ自動車の豊田章男社長は「業績が上がった企業が、従業員に還元するのは当然」と理解を示す。14年3月期の連結業績見通しは、営業利益が2兆2000億円と過去最高が視野に入る水準。トヨタ自動車グループで作る全トヨタ労働組合連合会は、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分を統一要求することを決めている。交渉はこれからだが、安倍政権からの強い要請もあり、ベアに踏み切るとの見方が強い。
株式相場の活況が追い風となっている証券業界は、野村証券や大和証券グループ本社が若手社員を中心に2~3%の賃金引き上げをする見通し。ダイキン工業も「好業績企業は賃上げを真剣に考えるべき時期に来ている」(井上礼之会長)とベアを実施する意向を表明している。
ただ、全企業数の99%、雇用者の約7割を占める中小・零細企業まで広がるかは見通せない。東京都大田区の金属加工、ダイヤ精機の諏訪貴子社長は「少しずつ仕事は増えているが、リーマン・ショック前の水準に戻っていない。ベアをできる状況ではない」と話す。円安による原材料価格の上昇や消費増税の影響など中小企業の経営環境は決して明るくはない。【大塚卓也、横山三加子、松倉佑輔】
最近の春闘は、定昇維持や雇用確保が最大の焦点だった。08年秋のリーマン・ショックや11年の東日本大震災が日本経済を直撃し、雇用や定昇の維持が危ぶまれたためだ。
経営側と労組側の隔たりが最も大きかったのは09年。原油や穀物価格高騰による物価上昇に対応するため、連合はベアを要求したが、リーマン・ショックの影響で企業業績は大幅に悪化。経営側は軒並み「ゼロ回答」を示した。そればかりか、日立製作所や東芝など多くの企業が、事実上の賃下げとなる定昇の一時凍結に踏み切った。
厳しい経営環境を受け、連合は10年から4年連続でベア要求を見送った。ただ円安が進行し、企業業績に明るい兆しが見え始めた13年は一時金の「満額回答」も目立った。
連合は14年、5年ぶりにベア要求を復活。SMBC日興証券によると、東証1部上場企業の13年度の最終利益は27兆円を超え、過去最高となる見通しで、好調な業績を背景に、ベア獲得へ向け交渉を進める。【横山三加子】
・・・ 平成26年1月15日(水)、毎日新聞 21時2分配信より
私のコメント : 原油や穀物価格高騰による物価上昇に対応のため、さらに、東証1部上場企業の13年度の最終利益は27兆円を超えて、過去最高となる見通しである。その好調な業績結果において、日本政府も労働組合の頭越しに企業に賃上げを要請している。この機会に、島根県竹島問題にも、日本政府機関、外務省 職員は、この問題に、さらに、前向きに、取り組んでもらいたいと願う。