<株安連鎖>もろい新興国…東証もアジア主要株価指数も下落 |
「経済活動の成長は勢いを増している」。米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融政策を決める会議(連邦公開市場委員会=FOMC)後の声明で、米国経済の現状判断を前回(昨年12月)から引き上げた。経済、雇用は今後も改善していくとして、米国債などの資産買い入れ額の縮小を続けることも決定。昨年12月までの月850億ドル(約8.7兆円)の買い入れ額が、前回と同じ100億ドル少なくすることで、2月には650億ドルに減る。
米国経済が堅調な中、多くの市場関係者は縮小継続を予想していた。一方、中国の経済指標の悪化やアルゼンチン・ペソの急落で、先週末から新興国全体に通貨安が加速していることに、FRBがどのような見解を示すかにも注目が集まっていた。
しかし、FRBの声明には新興国通貨の下落への言及がなかった。「一時的な指標や市場の変動には左右されず、実体経済改善の動きに従って緩和策を縮小していく姿勢」(米調査会社エコノミスト)を打ち出したと言える。市場は「今後も毎回の会合で100億ドル程度の縮小を決め、年後半には買い入れを終える」との見通しを強めた。
新興国の通貨安の背景には、FRBの緩和縮小で、「経済基盤の弱い『フラジャイル(もろい)・ファイブ』(トルコ、インド、インドネシア、南アフリカ、ブラジル)のような国から投資資金が引き揚げられる」との観測が強まったことがある。28、29日にインド、トルコ、南アの中央銀行は、通貨安に歯止めをかけるため、相次いで利上げした。金利を高くすれば、利回り目当てに投資家が自国通貨を買ってくれる、と期待できるからだ。ブラジルも今月15日まで、7会合連続で利上げした。
ただ、大きな効果は上げていない。しかも利上げは、借金のコストを押し上げるので、設備投資や個人消費を冷え込ませてしまう副作用もはらむ。29日のロイター通信は、「トルコのエルドアン首相が『今後、異例の景気刺激策を発表する可能性がある』と語った」と報じた。南アはプラチナ鉱山などでストが頻発して生産が落ち込み、輸出に悪影響を及ぼす中での利上げ。第一生命経済研究所の西浜徹主任エコノミストは「経済状態が悪い中での利上げはさらに景気を悪化させかねない。通貨防衛の効果にも限界がある」と、新興国の利上げを疑問視する。
2月下旬には豪州で主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。昨年10月のG20の共同声明は、米国の量的緩和縮小を念頭に「金融政策の将来的な変更は注意深く調整し、明確に説明する」と新興国への配慮を求めた。【工藤昭久、サンフランシスコ平地修】
◇楽観、悲観入り交じり
市場では「米景気の回復が世界経済の成長を底上げし、株価が再び上昇する」という楽観論と、「新興国経済の先行き懸念は根強く、世界的な株安が繰り返される」との悲観論が入り交じっている。
国際通貨基金(IMF)は1月21日、米国など先進国経済の回復がやや早まったことを受けて、2014年の世界経済の成長率予想を昨年10月時点から0.1ポイント引き上げ、3.7%とした。生保系アナリストは「1月の米雇用統計(2月7日発表)で、経済の回復基調が確認されれば、世界経済全体への安心感も広がり、今回のような混乱は起こりにくくなる」と指摘する。
ただ、通貨安以外でも、新興国経済の問題の根深さを指摘する声は多い。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「通貨安に見舞われた新興国は、先進国からのお金が入ることで経済成長を維持してきた。だが、自国で新たな価値を生み出し、投資資金を作っていけるような主力の産業が育っていない」と分析。量的緩和縮小など先進国の金融政策次第で打撃を受けざるをえない新興国のもろさを指摘する。
また、トルコでは政権の汚職疑惑がくすぶり、タイでも大規模な反政府デモが発生するなど、政治リスクも高まっている。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「政情不安などを材料に投機筋が売りを仕掛け、今回のような通貨安、株安が再燃する恐れがある」と警告する。
新興国経済が低迷すれば、日本からの輸出も伸び悩みかねない。日経平均株価の30日の終値は、前日比376円85銭安の1万5007円06銭。市場では「世界経済の混乱が拡大すれば、消費増税後、日経平均が1万4000円を割り込む」との観測も浮上している。【山口知】
・・・ 平成26年1月30日(木)、毎日新聞 22時13分配信より
私のコメント : 新興国経済が低迷、日本からの輸出も伸び悩みかねないという状況は、政府は、認識しておかなければいけない。今後、もし、輸出が伸び悩む状況が続くなら、各企業は、更なる、国内における消費拡大を目指した各商品の開発、日本政府の政策により、日本国民による国内需要の拡大を迫られてくる。