<広島土砂災害>72時間経過 捜索阻む「壁」 |
◇大量の土砂 重機活用できず
救助や安否確認の最大の妨げになっているのは、住宅地に流れ込んだ大量の土砂だ。泥は水をたっぷり含んで重い。一見締まっているようでも、一歩足を踏み出すとふくらはぎまで沈んでしまう場所も多い。
被害が最も大きかった安佐南区の八木、緑井両地区では、花こう岩が風化して表層に堆積(たいせき)した「真砂土(まさど)」と呼ばれる土が水を含んで一気に崩落、町を覆い尽くした。倒壊した家屋に泥だけでなく倒木や岩が入り込み、手作業での生存者捜索が難しい状況だ。
豪雨をたっぷり吸い込んで地盤がゆるんでいるため、大きな重機が入れられない場所も多い。22日深夜には、土砂に覆われてぬかるんだ斜面で、棒を手に持った自衛隊員が一列に並んで、地面の中にいるかもしれない不明者を捜す姿が見られた。天候が回復し、重機がほとんどの場所に入れられるようになったのは、23日になってからだった。
防衛省幹部によると、被災地には土木作業を専門とする陸上自衛隊の施設部隊が、広島県内の部隊だけでなく、岡山、島根両県の駐屯地からも投入されたが、がれきと粘性の強い土砂にはばまれ、作業が当初は思うように進まなかった。また、現場上流の谷筋には土砂が小さなダムのようにたまったままの危険な場所もあるなど、作業も慎重になりがちだという。
現場で指揮を執る陸上自衛隊第46普通科連隊長の一宮大介1等陸佐(46)は「現場は土砂やがれきの山で、上から滝のように水が流れてくる」と話した。東日本大震災でも捜索に当たった消防隊員(60)は「今回はがれきよりも土砂が多く、重たくてかき出すのが大変だ」と語った。
災害発生直後に現場を視察した、防災システム研究所長で防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏は、「現場は非常に狭くて急峻(きゅうしゅん)な地形で、重機などの機材で土砂や岩石などを取り除いた場合、周辺の土砂などが一気に崩れ落ちる危険性があり、簡単に撤去もできない」と指摘している。【目野創、杉山雄飛、久野洋】
◇2次被害 雨、何度も撤退
20日未明の土砂災害発生後も被災地では断続的に雨が降った。ただでさえ困難な現場で2次災害の恐れが高まり、捜索を困難にさせた。
「全員、下山せよ」。22日午後3時前ごろ、大量の土砂で覆われた被災地の斜面に、緊急退避を指示する無線が響いた。この日早朝に雷を伴う強い雨が降り、「山が変形している」との情報が入ったためだ。約1時間後に安全が確認され捜索は再開されたが、その間、警察官や消防、自衛隊員は救出活動をストップして待機を強いられた。
広島地方気象台によると、大気の不安定な状況が続いていることから、23日夜まで大雨注意報が出されたままだった。雨脚が強まるたびに作業中断を余儀なくされる状況が続いた。22日には午前5時過ぎから夕方まで大雨警報が出され、23日にも午前4時50分、雷注意報が発表された。
広島市は地盤が緩んでいるため少しの雨でも2次災害が起こる可能性があるとして、安佐北、安佐南の両区に出した避難勧告を継続している。同気象台は「土壌に含まれる水分は減ってはきているが、まだ安全ではない。雨が降ったら十分に気をつけてほしい」と呼び掛ける。
23日に八木地区の現地調査に入った広島大学大学院の海堀正博教授は、住宅地の上に位置する山の斜面で、数メートルから数十メートルおきに土砂や石などが流れ止まった場所が複数あったことを確認した。
30~50センチの岩や流木などが絡み合う形で土砂がせき止められており、「一度に土砂が住宅街に流れてきたわけではなく、今でも相当な量が山の斜面に堆積している。今は止まっているが、今後の雨などによってはいつそれが動き出してもおかしくない状況だ」と話している。【平川義之】
◇不明者数 全体像見えず
今回の土砂災害では、県警と市災害対策本部が発表する行方不明者数が大きく食い違う混乱もあった。安否確認が進まないもう一つの理由に、捜索すべき行方不明者が絞りきれないことがある。
21日朝時点で県警は行方不明者を7人、市は31人と発表した。県警は目撃情報などから確実に被害に遭ったとみられる人だけをカウントしたが、市は「川で流されている人を見た」「親族と連絡が取れない」など市消防局に寄せられた被害の有無が分からない通報も行方不明者に含めて発表した。総務省消防庁は「災害報告取扱要領」で行方不明者を「災害が原因で所在不明となり、かつ死亡の疑いのあるもの」と規定しているが、「あくまで原則で、災害様態などに合わせ現場の判断で報告してもらっている」のが実情という。
広島市などによると、消防は救出作業が任務の中心となる一方、警察は不明者や救出者の身元確認も重視することから、今回も数え方に差異が生じた。市民や報道機関から「双方の発表数字に乖離(かいり)がありすぎる」などの問い合わせが相次いだことを受け、21日午後までに県警と消防が情報を共有、行方不明者数を統一させた。
その後、県警は23日午後4時に行方不明者数を41人と発表。前日の午後5時半に47人と発表しており、表面上は行方不明が6人減ったように見えたが、ここでも事情は複雑だ。
この間、行方不明とされながら無事が確認された12人と、身元が判明した死者2人の計14人が行方不明者リストから除外された。一方で、知人や勤務先から「連絡が取れない」などの情報が寄せられ、行方不明者リストに新たに8人が加わったという。
県警は避難所を巡回して行方不明者の生存が確認されればリストから削除している。行方不明者が自宅に戻っていないか調べてもいるが、生存者の捜索活動を最優先にしていたこともあり、確認作業は思うように進んでいないという。
県警幹部は「比較的見つけやすい場所で行方不明になった方はほとんど見つかったはずだが、土砂のもっと奥深くで生き埋めになった人もいるはずだ」としたうえで、「いったいどれだけの人が亡くなっているのか、いまだに見当がつかない」と話す。【石川裕士、斎川瞳】
・・・ 平成26年8月24日(日)、毎日新聞 10時5分配信より

































