【甲信越の未】持続可能性育む「羊のワイン」 山梨・甲州市の「まるき葡萄酒」 |
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「甲州ワイン」の産地、甲州市勝沼町に、羊をブドウ畑で放し飼いにして除草と堆肥に活用している国内では珍しいワイナリーがある。「まるき葡萄(ぶどう)酒」。日本ワイン産業の祖の一人、土屋龍憲によって明治24(1891)年に設立された「現存する日本最古のワイナリー」をうたう生産者だ。
羊の導入は平成25年10月。同年6月に新オーナーとして、兵庫県尼崎市で貸しビル業を営む清川浩司社長が就任し、ワイナリー刷新の一環として、羊4頭を北海道の牧場から迎えた。昨年春には3頭の子羊が生まれ、同じ頃に2頭を千葉県の牧場から受け入れ、現在は9頭に増えた。
清川社長は「海外のワイナリーではブドウ畑に羊が放されている風景をよく見かける。不要な草を羊に食べさせ、糞(ふん)をそのまま肥料に使うことで、循環型のブドウ栽培を行える」と説明。
栽培担当の伊藤秀一さんも「羊が自由に畑の中を歩き回ることで土がほどよく耕される。ブドウの葉や付き過ぎた房を地面に落としておけば、羊は餌にする」と語る。同社の企業理念の一つが「サステナビリティー(持続可能性)」。羊はこの理念をワイン造りにつなげる重要な役割を担っている。
同社ではまた、0・6ヘクタールの自社畑に「不耕起草生栽培」という手法を19年冬から取り入れた。伊藤さんが栽培担当に就いたのがきっかけだ。不耕起草生栽培とは、畑を人工的に耕さず、草を自然に生やしておく農法。羊の導入による相乗効果もあるという。
伊藤さんは「ブドウの木と一緒にさまざまな種類の草を生やすと、土壌の中で伸びた根の周りに多様な微生物がすみ着き、増えていく」と説明。その効果について「悪い菌による土壌病害を抑えられ、バランスの良い水はけと保水性がもたらされる。伸びた草は多くの昆虫や小動物がすみやすい環境となり、ブドウの木を狙う害虫の天敵も増え、虫害を最小限に抑えられる」と語る。
家族連れの訪問客からは、ワインを試飲できない子供も畑の羊を見て楽しめると好評だ。ワインのラベルやコルクなどに羊をデザインする商品化も進める。昨年夏には、醸造用の最新式タンク30基、熟成用の新樽(だる)50本を導入するなど大規模な設備投資も行った。高品質な「羊のワイン」が続々と誕生しそうだ。 ・・・ 平成27年1月3日(土)、産経新聞 7時55分配信より
私のコメント: 山梨県産ワインは、美味しい。