<日銀>黒田総裁就任2年 物価目標の達成に正念場 |
◇2%の物価目標 想定外だった「原油価格の下落」
「エネルギー価格の動向によっては、マイナスになることも排除できない」。黒田総裁は記者会見で、1月に前年比0.2%まで鈍化した消費者物価指数(生鮮食品、消費増税の影響を除く)上昇率がマイナスに転落する可能性を認めた。物価がマイナスになれば、日銀が異次元緩和に踏み切った2013年4月以来となる。
異次元緩和導入時、黒田総裁は「2%の物価目標を、2年程度を念頭にできるだけ早期に実現する」と宣言したが、昨年夏以降の原油安で物価の上昇基調は頭打ちとなり、今春の達成は絶望的だ。黒田総裁も「想定外だったのは原油価格の下落」と誤算を認めた。
一方で、「物価をめぐる状況は大きく変化した。物価の基調は着実に改善しており、15年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高い」と2年間の金融緩和の成果を強調。総裁就任時は1ドル=95円台だった円相場は120円台まで下落。1万2000円台だった日経平均株価も2万円に迫る勢いだ。春闘でも賃上げの動きが広がるなど、経済は改善傾向が続いている。
黒田総裁は「足元の物価上昇率の低下は原油安で説明できる。消費者物価が(一時的に)マイナスになっても、ただちに物価の基調に影響は出ない」と説明。原油安の影響が一巡すれば、物価は再び上昇基調を強め、15年度後半には2%程度に高まるという従来のシナリオを繰り返した。
ただ、市場の見方は厳しい。民間エコノミストの予想平均は16年度でも1%台前半。日銀の最高意思決定機関である政策委員会の中にも「物価が2%に近づくタイミングは直近の見通しから後ずれする可能性がある」(白井さゆり審議委員)など慎重論がある。
年内に2%が見通せる状況にならなければ、日銀は2度目の追加緩和や目標達成期限の見直しなど、大幅な政策変更を迫られる可能性もある。昨年10月の追加緩和時は政策委員9人中、4人が反対にまわるなど政策運営は難しさを増しており、黒田総裁にとって正念場といえそうだ。
◇「二人三脚」日銀と政府の関係 微妙に変化
黒田総裁の就任以来、二人三脚でアベノミクスを推進してきた日銀と政府の関係も微妙に変化している。
黒田総裁は17日の記者会見で「物価の基調に変化があれば、ちゅうちょなく金融政策の調整を行う」と述べ、2%の物価目標の達成が危うくなれば、追加緩和を辞さない姿勢を改めて強調した。
ただ、政府は「2年で2%」の目標達成に固執する姿勢からは距離を置きつつある。政府は1月の月例経済報告で、前月まで採用してきた「(物価目標を)できるだけ早期に実現することを期待する」との文章から「できるだけ早期に」という表現を削除。政府・与党内には「日銀が目標達成にこだわり追加緩和に踏み切れば、円安がさらに進み、国民の負担が増えて経済にかえってマイナスになりかねない」との警戒感が広がりつつある。
総裁は「物価目標の早期実現は政府との共同声明にうたわれている」と強調しているが、政府の反応を探りながらの金融政策運営を迫られる。
財政再建を巡っては、さらに大きな認識のズレが垣間見える。総裁は2月の経済財政諮問会議で、国債価格の急落(金利の急騰)リスクに言及し、財政の信認低下に警鐘を鳴らしたとされる。
政府は消費税の再増税を約束しているが、安倍政権が経済成長を重視し過ぎて財政再建の手綱を緩めれば、市場は国債売りで対応しかねない。日銀は、政府が財政赤字を穴埋めするために発行した巨額の国債を、金融機関から大量に買い入れて長期金利を低く抑えており、国債が暴落すれば日銀や銀行への影響は大きく、金融システムが不安定になる。3年目の黒田日銀は、財政再建と金融市場への目配りを、より求められそうだ。 ・・・ 平成27年3月17日(火)、毎日新聞 22時3分配信より
私のコメント : 日銀と政府は、金融に詳しい知事もいる、その地方における財政にも、目を向ける必要性が、高まっている。