日銀、物価目標を“曖昧化” 原油安警戒「達成、多少前後するかも」 |
平成28年度前半ごろに2%の物価上昇目標を達成する、とした日銀のシナリオに対する懐疑論が強まっている。日銀は今年4月、目標達成の時期を先送りし、7月には生鮮食品とエネルギーを除く新たな物価指数の公表を始めた。市場では「日銀は物価目標の“曖昧化”に成功した」との声も上がる。
物価上昇を阻む要因の一つが、原油価格の下落だ。原油価格の国際指標となる米国産標準油種(WTI)は6月以降、3割近く下落した。また、金など19商品で算出する国際商品価格指数も12年ぶりの低水準に陥っている。
黒田総裁は物価の先行きについて「マイナスもあるかもしれない」と発言し、原油価格下落による物価下押し圧力の強まりを警戒する。
日銀は7月の金融経済月報から、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数の公表を始めた。価格変動の大きい品目を除くことで、物価の上昇基調は維持されている、との判断がしやすくなるとみられる。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「金利の安定を考えると、追加緩和はしにくい状態だ。物価目標のあいまい化によって、追加緩和を催促する雑音をシャットアウトできる。日銀は現実路線を取った」と歓迎する。
こうした中、日銀は今回の会合で景気判断を据え置いた。黒田総裁は「輸出と生産の鈍い動きは一時的なものだ」と述べ、国内景気のもたつきは早晩解消されると強調した。
また、中国経済の減速懸念については「地方の不況の長期化や最近の株価下落の影響など、いくつかのリスク要因はあるが、中国政府が景気刺激策を打つ余地はある」と述べ、来年までは7%程度の経済成長が見込めるとの見解を示した。
ただ、雇用や所得が改善しているにもかかわらず、個人消費の回復ペースは鈍い。黒田総裁は「消費は回復を示していく」と強調したが、市場では個人消費は4~6月にマイナスに陥るとの観測もある。
「企業は人手不足でも、人件費を増やそうとはしていない」(宮前氏)との指摘もあり、市場では先行きに慎重な見方も少なくない。28年度前半ごろとしている物価目標の達成時期は、さらに先送りとなるとの観測も強まっている。(米沢文) ・・・ 平成27年8月8日(土)、産経新聞 7時55分配信より
私のコメント: 日銀は7月の金融経済月報から、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価指数の公表を始めた。日銀による、今後の生鮮食品とエネルギーにおける消費者物価指数の公表も見守りたい。