来年度予算案 TPP 農業保護、根拠に疑問 既存の焼き直し 甘い試算 |
平成28年度予算案では、政府の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)政策大綱を反映した関連事業予算の大半が増額された。27年度補正も加えると手厚い措置だが、実効性は見通せない。政府が24日にまとめたTPP影響試算も、農業の保護対策が有効に作用した場合に限るなど前提条件は甘く、経済効果を裏付ける根拠までも疑問視される。
今回の予算案では、農地の大区画化を進めることを明記した政府のTPP政策大綱を踏まえ、農地や水路など農業インフラを整備する土地改良事業で27年度当初を232億円上回る3820億円を確保。27年度補正の990億円を加えれば、約1千億円が上積みされる。
5年の関税貿易一般協定(ガット)の多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)対策では、温泉施設など農業の体質強化につながらない土地改良事業に予算の過半が充てられ、バラマキと批判を浴びた。今回も土地改良予算の大幅な増額に、同様の批判が集中する可能性もある。
農地の集約や新規就農の支援など既存事業の焼き直しも目立つ。これらは現時点で明確な効果をあげたとは言い難いのが実情だ。また、農家の経営安定対策など「守り」の予算配分に偏り、輸出拡大など「攻め」の農業推進に向けた思い切った施策は見当たらない。
一方、甘利明TPP担当相は24日の経済財政諮問会議後の記者会見で、TPP影響試算の結果について「期待した数値になった。(今回の試算では)投資の効果をプラスしていないので、この分(効果は)大きくなる」と評価した。
ただ、TPP発効による国内農林水産品の生産減少額の算出方法に疑問も残る。11月に政府が示したTPP対策が想定通りに実施された場合を前提条件としており、少子高齢化による将来的な農業の担い手減少など慢性的な課題は織り込んでいないからだ。
TPPに伴う国内農産品の輸出拡大についても輸出戦略の未整備を理由に試算自体を先送りした。農業従事者からは「攻めの農政の観点が欠落した上に、対策が想定通りに進むことを前提にした楽観的な試算」と批判の声もあがっている。
これに対し、政府は「TPPによる成長メカニズムが経済再生にどうつながるか国民に示すためのもの」と試算の意義を強調する。試算内容も、現時点で定量化できる経済効果を考慮した、「限定的かつ保守的な見積もり」と説明する。
しかし、TPPで得られるメリットを最大化しなければ、今回の試算も画餅にすぎない。農漁業のみならず産業界すべてにTPPの活用を促す施策の具体化が求められている。(西村利也) ・・・ 平成27年12月25日(金)、産経新聞 7時55分配信より
私のコメント: 平成28年度予算案では、政府の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)政策大綱を反映した関連事業予算の大半が増額された。27年度補正も加えると手厚い措置だが、実効性は見通せない。農漁業のみならず産業界すべてにTPPの活用を促す施策の具体化が求められている。価値観、宗教感、国民の心の痛みのわかる政治家も、必要である。