<台湾総統選>初の女性総統の誕生濃厚 蔡氏、終盤も独走 |
【屏東(台湾南部)鈴木玲子】16日投開票の台湾総統選まで残り1週間を切った。選挙戦終盤に入っても、独立志向の強い最大野党・民進党候補の蔡英文主席(59)が首位を独走。民進党による8年ぶりの政権奪還と、初の女性総統の誕生が濃厚な情勢となっている。総統選には与党・国民党の朱立倫主席(54)と野党・親民党の宋楚瑜主席(73)も出馬しているが、最終盤の世論調査でも蔡氏が4割以上の支持を集め、朱氏に20ポイント近い大差。宋氏の支持率は10%台にとどまっている。9日は、蔡氏が南部・高雄、朱氏は北部・台北とそれぞれの有力地盤で大規模集会を開いて支持を訴えた。蔡氏はこの日、故郷である最南端・屏東県にある道教の廟(びょう)で当選を祈願。数百人の支持者を前に「故郷から出発し、台湾全土を照らす」と当選への意気込みをみなぎらせた。南部から台北へ北上しながら、投票前日まで各地で大集会を開く計画だ。朱氏は、馬英九総統ら党有力者と共に台北市内を行進後に広場で大集会を開いた。朱氏は「台湾の安定のため共に歩もう」と国民党政権の堅持を呼びかけた。台湾では、馬政権の対中融和路線で中国にのみ込まれるとの不安感が広がり政権批判につながった。国民党はさらに総統選候補の途中交代などという混乱が支持者から批判を招いて苦戦している。最大の争点は対中政策だ。国民党の馬政権は「一つの中国」の原則を認めたとされる「1992年合意」を交流の基礎としてきた。昨年11月の中台首脳会談でも、習近平国家主席と馬総統が92年合意を確認した。だが民進党は党綱領で台湾独立を掲げ、合意の存在を認めていない。朱氏は、蔡氏に92年合意を受け入れるのか態度をはっきりさせるよう迫る。テレビ討論会などで蔡氏が中台関係について語る「現状維持」についても、朱氏は「現状が何を指すのか説明があいまいだ。中台関係が不安定化する」と訴える。だが、蔡氏は合意について「異なる意見がある」「唯一の選択肢ではない」とかわし、あいまい戦略を貫いている。民進党の陳水扁政権(2000~08年)時代は中台関係が緊張し、経済低迷を招いた。経済界には蔡政権が誕生したら再び中台関係が悪化するのではとの不安があるため、蔡氏は、中台関係を安定的に維持させる姿勢を示して懸念の払拭(ふっしょく)に努めている。 ・・・ 平成28年1月10日(日)、毎日新聞 11時0分配信より
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最大野党の蔡英文候補、安倍首相の地元・山口訪問へ…親日をアピール
台湾の最大野党、民主進歩党(民進党)から来年1月の総統選に出馬する蔡英文主席(59)が近く山口県を訪問することが分かった。安倍晋三首相の地元を訪問することで、対日重視の姿勢をアピールするのが狙いとみられる。安倍首相サイドも次期総統の呼び声が高い蔡氏を厚遇することで、日米台のさらなる関係強化につなげたいとの思惑がありそうだ。(九州総局 村上智博)
蔡氏は10月6日に東京入りし、7日午前に山口県の村岡嗣政知事と県庁で会談して地場産業の振興策などについて意見交換する。蔡氏の来日計画が表面化したのは今月中旬ごろ。来日を希望する蔡氏側が首相の実弟、岸信夫衆院議員(山口2区)側に持ちかけたところ、岸氏側が、「道案内役を買って出た」(周辺)という。蔡氏は山口滞在中、台湾を走る高速鉄道の車両造りも担った日立製作所笠戸事業所(下松市)で、製造現場を視察し、そのまま東京に戻る窮屈な日程となっている。あえて慌ただしい日程を組んだのは、来年1月の台湾総統選をにらんだ政局的な思惑もあるようだ。福岡市の民間団体「台湾研究会」を主宰する永嶋直之氏(69)は、「安倍首相の地元を訪問して首相との距離が近いことを印象付けられれば、親日な台湾での総統選に有利になるとの判断が働いたのではないか」と語る。現在台湾では、馬英九総統による対中融和策の影響で、日台関係に不協和音が出始めたことを憂慮する声も出ている。蔡氏の来日は、こうした日台双方の懸念への配慮があったとみられる。実際、馬総統は今年5月、東京電力・福島第1原発事故を理由に、科学的根拠もなく日本からの食品輸入規制を強化し、日台関係に軋(きし)みが生じた。特に、台湾への農水産品の輸出に力を入れる九州・山口地方では、台湾当局による突然の措置について事前協議が一切なかったことから、困惑と懸念が広がった。馬氏は今年7月、台北の抗日戦争勝利70周年記念討論会で、自身を親日ではなく「友日」と言い、政権末期になって「日本と距離を置き始めた」(九州の日台関係筋)との受け止めが広がり始めていた。これに対し、蔡氏と日本とは浅からぬ因縁だ。親日家で知られる李登輝元総統の外交ブレーンを務めたこともある。今年6月には米誌「TIME」アジア版の表紙を飾った。蔡氏は今年5~6月に訪米した際も米側から破格の待遇を受けた。通常は政府庁舎外のホテルで面会する慣例を破り、オバマ政権の国務省高官は同省内に蔡氏を迎え入れた。“ポスト馬”をにらんだ米台関係の強化に向けた対応だ。そんな蔡氏が総統選を前に来日すれば、日台のみならず米国、中国当局も滞日中の言動を注視するのは間違いない。首相サイドも当然、こうした各国の反応は織り込み済みとみられ、「総統選で蔡氏を側面支援したと受け取られる覚悟で来県を受け入れたのではないか」(永嶋氏)との見方もある。東アジア情勢は現在、韓国の朴槿恵政権が米中をてんびんにかけるような足腰の定まらない危うい外交を続けている。朴大統領による中国の抗日軍事パレードへの出席や、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加表明など、日米両当局者が懸念を示す言動が続いている。それだけに、安倍首相にとって自由と民主主義、人権という共通の価値観を持つ台湾への思いは強い。朴政権の異常なまでの反日政策で日米韓3カ国の連携がままならない中、蔡氏来日で日米台の連携強化への期待は高まりそうだ。2015.9.29 12:00 更新 ・・・ 平成27年9月29日、産経新聞 12:00 配信より
私のコメント: 台湾の最大野党、民主進歩党(民進党)から1月の総統選に出馬する蔡英文主席(59)が山口県を訪問されている。安倍晋三首相の地元を訪問したことで、対日重視の姿勢、世界に向けて、そのアピールすることができている。安倍首相サイドも次期総統の呼び声が高い蔡氏を厚遇することにより、与党・国民党の朱立倫主席(54)と野党・親民党の宋楚瑜主席(73)より、はるかに、日米台との間では、さらなる、国際金融・国際政治関係にても、その強化となるとの思惑が働いていると思われる。