東日本大震災 福島第1原発事故 4町村、避難指示解除 喜びと不安、交錯 /福島 |
浪江町と飯舘村、川俣町の3町村で31日、富岡町でも1日、東京電力福島第1原発事故による居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示が解除された。古里に戻れる喜びと生活インフラや放射線量への不安が入り交じる中、避難指示の解除式典などが行われ、住民らが地域に戻り始めた。
かつての村、取り戻す 飯舘で式典 決意の「故郷」合唱
飯舘村では31日午前、村主催の式典があり、菅野典雄村長が「解除がゴールではなく、ここからが復興のスタート。村の自主・自立の精神と復興への志を改めて高めていきたい」と決意を述べた。村民代表が「子どもが自然の中で遊び、年寄りが畑で笑っていて、若者が恋を語る。かつての村の姿を、私たちは一歩一歩取り戻していきます」などとする宣言を読み上げた。 出席者は唱歌「故郷(ふるさと)」を合唱。村立飯舘中の生徒が村の方言「までい」(真心の意)を歌詞に込めたオリジナルにない4番を披露し、<胸に生きる 思い出 いつも村を 思わん までいの心 めぐりて わたしたちの ふるさと>と、復興への思いを歌声に乗せた。【宮崎稔樹】
飯舘のカボチャ守る 「種つなぐため」福島市残留
白く薄化粧をしたような愛娘--。飯舘村でカボチャを育ててきた農業、渡辺とみ子さん(63)は、東京電力福島第1原発事故で避難した福島市で、今も作り続けている。飯舘生まれの新品種で、「全ては種をつなぐため」。31日に村の避難指示が大部分で解除されたものの、村と自身の誇りであるカボチャを守るため、しばらくは帰還しないつもりだ。 3月下旬、福島市内のイベント会場の一角にカボチャで作った蒸しパンやスープのもとが並んだ。パッケージには「いいたて雪っ娘(こ)」。根強いファンが販売を聞きつけ次々と買っていった。 雪っ娘は、山あいの飯舘に降る雪のように白っぽい薄緑色の皮が特徴だ。15年ほど前、村出身の育種家から栽培を持ちかけられた。「しっとりとして甘い」。畑の片隅に一人で種をまき始めた。 2004年、平成の大合併が各地で進む中、村は自立を選んだ。行く末を話し合う村の集会に出ると、周りは男性ばかり。「村も女性も、自信が持てるものを作らないと」。渡辺さんは農家の女性らを巻き込み、品種改良に取り組んだ。 11年3月の大震災発生から4日後。念願の品種登録はかなったものの、福島第1原発で水素爆発が起きていた。翌月、村は全域が避難指示区域になった。 カボチャの種は収穫した翌年に植えないと虫がつく。避難先で農地を探し、種を植えたのは5月。土が硬く芽が出づらい休耕田で、種をカラスに食べられたり湿害で腐ったりもした。「どうせうまくいかないよ」。周囲の言葉も胸に刺さった。間もなくすると、黄緑色の芽が土から小さな顔を出した。「こんな環境なのに自分の一生を全うしようとしている」。雪っ娘と自身の境遇が重なり、涙がこぼれた。同年11月に商標登録する際、風評被害を恐れて雪っ娘から「いいたて」の名を抜く意見も出た。「何も悪いことはやっていない」。断固反対した。国が定めた食品の放射性セシウムの基準値をはるかに下回る「1キロ当たり20ベクレル以下」を自主的な出荷基準にした。事故から6年。雪っ娘を大手スーパーの生鮮食品売り場に置いてもらい、3日間で100キロを完売した。品質も認められ、東京での出張販売も予定している。飯舘の自宅庭はイノシシが穴を掘り、木には猿が登る。獣害で雪っ娘が全滅する危険があるから、まだ戻れない。でも穏やかに時間が流れる大好きな村で「いつかまた、雪っ娘を育てる」と決めている。【宮崎稔樹】
災害公営住宅が完成 町民ら「やっぱり古里が一番」 富岡
富岡町民向けの災害公営住宅の完成式が31日、同町小浜であった。福島第1原発事故による避難指示が一部を除いて解除された1日以降、町民らが順次入居していく。町は東日本大震災の津波や揺れで自宅が損壊した人に加え、長期避難で家が住めない状態になっていたり、帰還困難区域から避難していたりする町民のために災害公営住宅を昨年から建設してきた。一戸建てと集合住宅計154戸を今年中に整備する計画だ。同町小浜では、公設民営の商業施設「さくらモールとみおか」や町営診療所がある一角に、一戸建て50戸が完成した。町企画課によると、32戸で4~92歳の計72人の入居が決まり、31日から鍵の引き渡しが始まった。郡山市に避難中の伊藤栄一さん(86)と妻ヒデさん(80)は5月の連休前後に入居する予定といい、鍵を受け取って住宅の間取りや収納などを確認。「広い」「風通しがいいね」と笑顔を浮かべた。ヒデさんは「郡山は住みよい便利なところだけど、やっぱり生まれ育った場所が一番」と、まもなく再開する古里での暮らしに思いをはせた。【曽根田和久】
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Copyright 毎日新聞・・・ 2017年4月1日 毎日新聞 地方版 より
私のコメント : 2017年4月1日 福島第1原発事故 4町村、避難指示解除 浪江町と飯舘村、川俣町の3町村で31日、富岡町でも1日、原発事故による居住制限区域と避難指示解除準備区域の避難指示が解除された。
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