山梨県山中湖村の三島由紀夫文学館で、作家三島由紀夫(1925~1970年)の生誕100年の企画展が開かれている。三島の名前が付く文学館は全国唯一で、村の中央に位置する山中湖は三島作品にたびたび登場。研究者やファンにとっては「聖地」の一つとされる。今年1月の開催以降、訪問者が例年より多いといい、担当者はさらなる集客に期待を寄せる。(共同通信=高野陽子) 文学館によると、開館は1999年7月。資料が散逸しないよう公共施設での保存を希望した遺族の意向と、文学を中心とした街づくりを目指した村の方針が一致した。村は予算約3億円を計上し、資料を一括購入した。 三島作品には、山中湖の他にも富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社や甲府市の昇仙峡といった県内の名所が書かれている。最後の長編小説となった「豊饒の海」4部作の第3巻「暁の寺」の創作ノートに、三島自身がスケッチした山中湖一帯の地図も残されている。
企画展の目玉は、霊験劇「聖セバスチァンの殉教」の直筆翻訳原稿だ。今回が初公開で、禁じられたキリスト教の信仰を貫き、犠牲になった主人公に強く引かれた三島は、フランス語を勉強し1年余りかけて訳した。 山中湖村教育委員会の野村晋作学芸員は企画展について「ファンも知らない人も楽しめるよう工夫した」と語る。両親と初めて文学館を訪れたという東京都世田谷区の高校1年安江那奈香さん(16)は、短編小説「憂国」がお気に入りで「関連する直筆原稿を見ることができてうれしかった」と話した。 館長の佐藤秀明近畿大名誉教授(日本近代文学)は「三島作品と自分の興味の接点や、読むきっかけを見つけてもらえたらうれしい」と願う。 三島由紀夫 1925年東京都生まれの作家。東大法学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入るものの退職し、作家活動に専念する。著書に「仮面の告白」「金閣寺」「豊饒の海」など。1960年代にはノーベル文学賞の有力候補だった。左翼運動の台頭に危機感を抱き、憲法や国防への関心を強め、学生らと民間防衛組織「楯の会」を結成。1970年11月、陸上自衛隊市ケ谷駐屯地で隊員に決起を促す演説後、割腹自殺した。