高騰する家賃、過熱する「賃貸戦争」…そして記者は東京を出て行った |
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高騰する家賃、過熱する「賃貸戦争」…そして記者は東京を出て行った
2026/04/01 12:00
高騰する家賃、過熱する「賃貸戦争」…そして記者は東京を出て行った : 読売新聞 配信より
瀬戸聡仁
もう東京には住めない。この春、引っ越しの準備を進めた記者が実体験から得た結論だ。賃貸情報サイトで物件を探し、不動産屋に問い合わせ、実際に物件を見て契約を決める。至極当たり前の手順だが、何一つうまくいかなかった。高騰する家賃、希少な優良物件……。早い者勝ちの「賃貸戦争」では、金を出すか、運に恵まれなければ引っ越しは諦めざるを得ない。これは、東京での引っ越しを考えていた夫婦が、神奈川に脱出するまでのドキュメンタリーである。(デジタル編集部 瀬戸聡仁)
愛着のある部屋だが…
東京メトロ千代田線・綾瀬駅から徒歩15分、家賃約13万円の1LDKの部屋で記者は暮らしている。建物は古いが、風呂の追いだき機能が利かなくなり始めていること以外、特に不満はない。
しかし、新婚生活をすることになった。相手はいわゆる「城南エリア」(港区、品川区、目黒区、大田区など)で働いており、東京北部にある綾瀬から通勤するには少しきつい。間取りも、ぜいたくを言えばもう1部屋欲しい。九州からの異動で移り住んで2年。街や部屋への愛着もあるが、引っ越しを決断した。
驚愕の家賃
記者の職場は大手町にある。話し合いの結果、2人の通勤がしやすい京浜東北線と京急線の駅が近い物件を探すことにした。「品川、大井町、大森、蒲田、50平方m以上、2DK、2LDK、3DK……」。2月上旬、スマートフォンで賃貸情報サイトに希望を打ち込むと、1400件以上が該当した。しかし、赤字で強調された35万、42万、60万という家賃に目玉が飛び出た。とても2人の給料で払える家賃ではない。
無理をすれば20万円台は払えるかもしれないが、妻は「将来に備えてしっかり貯金したいし、家賃は抑えたい」という。もっともな意見だ。話し合いの結果、家賃の上限は16万円という結論に落ち着いた。先ほどの条件に、家賃の上限を加えて再び検索する。「50件」。だいぶ絞られたが、「ここまで候補が減るのか」という驚きが大きい。
しかも、掲載されているのは築50年を超えていたり、駅までバス15分だったり…。比較的新しそうな物件も、駅まで徒歩20分以上など、利便性に欠ける。ぜいたくを言っていることに後ろめたさを感じながら、ひとまず、対象路線を追加し、専有面積を45平方m以上に下げ、対象を広げることにした。すると、150件まで物件数が増えた。比較的新しく、広そうな物件を3件ピックアップし、それぞれの不動産会社に問い合わせをした。
幸先は良かったが
5分後、さっそく担当者から電話があった。不動産営業マンの仕事の速さに舌を巻く。「お問い合わせの物件はすでに申し込みが入ってしまいまして……よろしければ似たような条件で物件をご提案させていただきます」
埋まっているのならなぜサイトに載っているのか。とりあえず、「助かります。お願いします」と伝え、電話を切った。さらにその10分後、別の不動産会社からも電話があった。「お問い合わせのあった物件はまだ空きがあります」とのこと。物件は、大井町駅徒歩15分で55平方m、築30年のマンション。間取りも広さも2人暮らしには申し分なく、大井町なら2人の通勤も楽だ。「ありがとうございます。内見できますでしょうか」。契約に前向きな姿勢を見せ、1週間後の内見予約をした。ちなみに、3件目の不動産会社からは3月が終わっても連絡がない。
内見を待ったら終わり
「もっといい物件があるかも」と、内見までの1週間も物件探しに精を出した。しかし、結論から言うと、もっといい物件はなかった。
最初に問い合わせをした不動産会社からの案内も何度かあったが、築50年ほどのものや、面積が狭かったり、家賃が少し高かったりと、ピンとくる物件はなかった。
情報サイトからの問い合わせも、10件ほどした。しかし、「もう契約が入ってしまった」というものばかり。「埋まっているのになぜ情報サイトに掲載されているのか」という憤りは日に日に強くなっていった。まだ住人が居住中でも、新しい申し込みが入っているという物件が多かった。
さらに、「3番目の申し込みならお受けできます」という不動産会社からの回答もあった。キャンセル待ちだ。内見をせず申し込むのは、当たり前になっているのだろうか。「設定した家賃は低すぎるのでないか」「内見をしていたら終わる」。苦い思いをするばかりだった。内見予約をした物件が埋まっていないことに、いちるの望みをかけた。
捨てる神あれば拾う神あり
内見の当日、夫婦で不動産会社がある蒲田に降り立った。しかし、その直後、記者の電話が鳴った。約束していた不動産会社からだ。「きょう内見予定だった物件が埋まってしまいました」。望みは打ち砕かれた。夫婦の間にも微妙な空気が流れたが、ひとまず、予定通り不動産会社に行くことにした。物件を紹介してもらえるかもしれない。
不動産会社では、同じような家賃の物件を3、4件提案してもらった。しかし、どれもちょっとずつ不便だったり、条件に合わなかったりする。しかも、どれも2人暮らしをするには狭い。こちらからも、情報サイトに掲載されている物件を提案すると、「その物件は筋が悪いんですよね……オーナーさんがいわゆる不動産ヤクザというか……」。もうだめだ。
引っ越しを延期することも視野に入り始めたころ、パソコンに向かっていた担当者が声を上げた。「今、空きが出ました!」。聞けば、築35年2LDKで、家賃は15万円。リノベーションもされている。人気の物件で、いつも倍率が高くなるのだという。ただし、住所は横浜市。記者の職場へは今の家よりも遠くなる。それでも、「迷ったら終わる」という心の声が背中を押した。即決し、20分後には審査の申請を終えていた。3月下旬に住人が退去する予定の物件だが、内見できるまで待っていたら契約できなかった挙句、引っ越しも諦めていただろう。
背景にはマンションの価格上昇
物件探しに苦労しているのは、実は記者だけではない。リクルートの不動産・住宅情報サイトSUUMO(スーモ)副編集長の佐々木綾香さんは、「東京を中心に、賃貸物件の供給が少ない状況が続いています」と説明する。背景には、東京でのマンション価格高騰があるようだ。
全国のマンション価格は2013年頃から上昇傾向を見せ、2021~2022年から資材費の高騰などを理由に、顕著に上がっている。佐々木さんによると、新築・中古を問わずマンションの販売価格が高騰している影響で、賃貸に住んでいる人がなかなか出ていくことができず、賃貸の供給が減り、家賃が上がっているという。
特に、カップル向け・ファミリー向けの広さの物件は顕著だ。SUUMO反響データ(2025年1月~3月)によると、2016年と比較して、東京23区のシングルタイプの家賃は約15%、3LDK以上のファミリータイプは約30%上昇している。1都3県の首都圏だけでなく、大阪、名古屋、福岡などの大都市圏でも上昇している。
一方で、地方では家賃の値上げは進んでいないという。少子高齢化の影響で世帯数の減少が始まっており、住宅需要が弱まっていることが要因だ。しかし、都市部では世帯数のピークはまだ来ていないとされており、需要が弱まる兆しはない。都市部と地方部で、二極化が進んでいるのが現状のようだ。
今後も上がり続ける?
実際、東京ではどのくらいの家賃価格になっているのか。不動産サービス・アットホームの調査によると、今年2月の東京23区内の賃貸マンションの家賃平均は、30~50平方mの物件は17万9106円、50~70平方mで25万7620円となっている。記者の設定した「家賃16万円」では、2人で23区内に住むのは元々無理があったということだ。ちなみに、10年前の2016年は、30~50平方mで11万9053円、50~70平方mが16万3180円だった。10年前なら、東京に住めていたかもしれない。
東京の家賃はこれからどうなっていくのか。SUUMO副編集長の佐々木さんは「都市部の家賃については、下がる材料がなく、上昇は続いていくでしょう」と語る。世帯数のピークがまだ先で、資材費や労務費が下がる要因もないことが原因という。さらに、「中長期的にみれば、人口減少の影響もあり、都市部と地方で差がさらにひろがっていくと考えられます」と予測する。
つまり、記者が次に引っ越すときは東京からさらに離れなければならないということだ。今回見つけた部屋は、長く住むことになりそうだ。
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西川 俊作/日本経済新聞社
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